来月の仕入れの代金を、払えるか。家賃を払ったあとに、まだ手元が残るか。こういうことを月末に知るのに、帳簿を全部つける必要はありません。数字が3つあれば足ります。手元の現金、まだ入っていないお金、まだ払っていないお金。この3つです。
お金を管理するという言い方は、少し大げさに聞こえます。先に勉強が要るように思えます。けれども、やることは月に1回、この3つを同じ場所に書き留めることです。帳簿をつけたことがなくてもできます。むしろ、これができていれば、帳簿をつける目的の半分はもう果たせています。
1つ目は、手元の現金です。引き出しの中の現金と、銀行の口座の残高と、電子のお金の残高を、足して1つにします。足して1つにする、というところが肝で、別々に見ていると、どこかにまだ残っているような気がしてしまいます。注意が1つあって、店のお金と自分のお金が同じ口座に入っていると、この数字は数えられません。混ざっているなら、分けるほうが先です。
2つ目は、まだ入っていないお金です。売ったけれども、代金をまだもらっていない分です。月末に納めて支払いは翌月、という取引があるなら、必ずいくらかあります。ここで大事なのは、合計の額だけでなく、誰からいくら、いつまでに、を書くことです。
3つ目は、まだ払っていないお金です。仕入れ先への代金、家賃、借入の返済、給料。ここでも、金額の横に、いつ払うのかを書きます。
この3つ目には、税金の支払いも入ります。相手が待ってくれない種類の払いで、期限も自分では動かせません。1つ正直に書いておきます。私は税理士でも弁護士でもないので、どの税がいつ、いくらかかるのかは、必ず専門家に確かめてください。この記事で言えるのは、その期限を3つ目の数字の中に書いておかないと、月末の判断が狂うということだけです。
3つのうち1つだけを見ても、何も決められません。手元の現金が多い月でも、翌月の払いが重ければ足りません。現金が少ない月でも、払いより先に入ってくる予定があれば乗り切れます。3つを並べたときにはじめて、来月の自分が困るかどうかが見えます。
金額より先に、日付です。私はここを長いあいだ軽く見ていました。入ってくる予定の合計と、出ていく予定の合計を比べて、入るほうが多ければ大丈夫だと思っていました。けれども合計が足りていても、順番が合っていないと途中で詰まります。形を見せるための仮の数字で書きます。手元に3、入ってくる予定が10、出ていく予定が合わせて8。合計では足りています。ところが出ていくのが5日と10日で、入ってくるのが25日なら、10日の時点で足りません。
月末に3つを書くとき、金額の横に日付を書いておけば、これが先に見えます。先に見えれば、やれることがあります。入ってくるお金を早めてもらう、払う日をずらしてもらう、その月の仕入れを少なくする。どれも、前の日に気づいたのでは間に合いません。
この3つは、記録を残すために見るのではありません。決めるために見ます。仕入れを増やしてよいか、機械を買ってよいか、人を一人増やしてよいか、自分に給料を出してよいか。どれも、3つが載った1枚があれば、勘ではなく見て決められます。帳簿をつける本当の理由は、過去を書き残すことではなく、こちらだと思っています。
我々が作っている KAZENA Books では、2つ目と3つ目が黄色で出ます。まだ入っていないもの、まだ払っていないものに色が付く作りで、黄色はまだ終わっていないという意味です。終わっていないものだけを拾って見られます。
元になる記録のほうも、手で全部打ち込まなくて済むようにしてあります。レシートや請求書、銀行明細の CSV を入れると、AI が読み取って科目・金額・税額を提案し、使う人が確認して承認します。請求書も同じ場所で作れて、誰からいくら受け取るか、こちらが誰にいくら払うかが、そこで管理されます。ただ、道具そのものはそれほど大事ではありません。紙でもできます。大事なのは、3つが同じ場所にあって、月に1回必ず見ることです。
今日やることを1つ書きます。今日の時点の3つの数字を、1か所に書いてください。手元の現金、まだ入っていないお金、まだ払っていないお金。後の2つには、相手と日付も添えて。そして来月の月末に、もう一度同じ3つを同じ場所に書く。2回書けば、増えているのか減っているのかが見えます。1回目は30分くらいかかりますが、2回目からは10分で終わります。
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