KAZENAKAZENA
記事一覧へ

「現金は増えたのに赤字」はなぜ起きるか

2026年10月23日 · Taro(KAZENA代表)

月末に引き出しを開けて、現金が先月より増えている。それなのに、月に1回の引き算をすると赤字だった。あるいは逆に、数字の上では残っているはずなのに、財布が軽い。この2つがずれるのは、計算を間違えたからではありません。お金が動いた日と、商売が起きた日が、別の日だからです。

前の回に、月に1回の引き算のことを書きました。入ってきたお金から、売る物のために払ったお金と、それ以外の払いを引く。あのとき、現金が増えたことと黒字であることは同じではない、と書いて先に進みました。今回はその続きです。

測っているものが違う、というだけの話です。黒字か赤字かは、その月に商売として何が起きたかを測っています。現金が増えたか減ったかは、その月に財布を出入りした分を測っています。同じ商売の、別の面です。どちらかが正しくて、どちらかが嘘ということはありません。

この2つをずらすものは、だいたい3つです。ツケ、まとめ払い、在庫。まずツケから書きます。売った日と、お金をもらう日が違います。月末に納めて支払いは翌月、というやり方は、小さな商売でもよくあります。売れた分は、その月に商売として起きたことなので黒字の側に入ります。けれども現金は、まだ入ってきていません。ツケが増えた月は、黒字なのに財布が軽くなります。

数字を1つ置いてみます。説明のための仮の数字です。ある月の売上が10で、そのうち4がツケだったとします。売る物のために払ったお金が5、それ以外の払いが3なら、引き算の答えは2で、その月は黒字です。けれども実際に入ってきた現金は6、出ていった現金は8ですから、財布は2減っています。同じ月が、黒字で、しかも現金が減っている。これが順番のずれです。

2つ目はまとめ払いです。家賃を半年分まとめて払う、保険を年に1回払う、機械を買う。どれも現金は払った月に全部出ていきますが、その代わりに手に入るものは、これからの何か月かで使います。だから払った月だけが重く見えて、そのあとの月が軽く見えます。一年を通して並べないと、どの月が本当に重かったのかが分かりません。

3つ目は在庫です。仕入れた日に現金は出ていきますが、棚に積まれている間は、まだ商売として何も起きていません。売れた日に、はじめて売上と、その物のために払ったお金が揃います。棚の品物は、形を変えたお金です。だから仕入れを増やした月は現金が減りますが、それは損をしたのではなく、お金が品物に変わっただけです。売れなければ、そのときに本当の損になります。

ずれは逆にも起きます。現金は増えたのに赤字、という月です。前の月のツケがまとまって入ってきた、代金を先に受け取った、お金を借りた。どれも財布は重くなりますが、その月の商売が良かったわけではありません。借りたお金は売上ではありませんし、先にもらった代金は、これから品物か仕事で返すものです。財布が重い月に気を許すと、次の月に効いてきます。

だから、見るものは2つあります。月に1回の引き算と、財布の動きです。引き算だけを見ていると、入ってこないお金の上で黒字を続けて、払う日に詰まります。財布だけを見ていると、お金が入ってきた月を良い月だと思い込みます。どちらか一方では足りません。

私も読み違えました。会社として年に1回まとめて払うものがいくつかあって、その月の支払いを見て、使いすぎたと思ったことがあります。実際には、その1回で12か月分を払っていました。月ごとに均してみれば大きな額ではなかったのに、払った月の数字だけで判断しようとしていたわけです。逆に、入金がまとまって届いた月を、調子の良い月だと思っていたこともあります。

我々が作っている KAZENA Books では、この2つが別の表になります。レシートや請求書、銀行明細の CSV を入れると、AI が読み取って科目・金額・税額を提案し、使う人が確認して承認します。承認された行から、その月に商売として何が起きたかの表と、いま何を持っていて何を負っているかの表が自動で作られます。前者が損益計算書、後者が貸借対照表と呼ばれているものです。請求書も同じ場所で作れて、売掛と買掛がそこで管理されるので、誰にいくら残っているかもそこで分かります。

税のことにも触れておきます。私は税理士でも弁護士でもないので、申告や納税の判断は必ず専門家に確かめてください。その上で1つ言えるのは、申告のときに見られるのは、たいてい現金の動きではなく、商売として起きたことのほうだということです。だからツケや在庫をどこにも書き残していないと、あとで辻褄が合わなくなります。

今日やることを1つ書きます。紙を1枚用意して、今日の時点でまだ入っていないお金と、まだ払っていないお金を書き出してください。誰にいくら、いつまで。それだけです。15分で終わります。財布の中身と、この2つの一覧を並べて見ると、来月の自分がどこで詰まるかが、今日のうちに見えます。

あなたの声を聞かせてください

KAZENAのアプリを使った感想、直してほしいところ、「こんな機能が欲しい」という提案——インドネシアやフィリピンの中小企業オーナーさん、フリーランスの方の声こそ、私たちが一番聞きたいものです。インドネシア語・英語のメッセージには、現地を知り尽くした仲間が応えます。また、KAZENA Booksはフィリピンとインドネシアでの展開がすでに決まっています。それ以外の国で一緒に展開してくださるパートナー企業様、システムのご購入をご検討の企業様も、お気軽にご連絡ください。新しいシステム開発のご相談もお受けしています。少人数のチームのため、すぐの着手をお約束できないこともありますが——日本品質(メイド・イン・ジャパン)のものづくりで、現地の商売に寄り添う開発を、一件ずつ丁寧に。

お問い合わせへ

他の記事もどうぞ