「よい商品なのに、まだ多くの人にわかってもらえない」と感じるとき、原因が商品のほうではなく、見せ方のほうにあることがあります。実物はいいのに、画面に出すと安っぽく見える。しかも、どこが悪いのかを言葉にできない。たいていは、自分にセンスが無いからだろう、と片付けて終わります。私たちも同じことをしました。作例のために作った車の映像を見て、これは安っぽい、と思った。それだけで、何を直せばいいのかは1つも分かっていませんでした。
先に、何の話かを書きます。KAZENA Motion のページに置いてある15秒の映像は、そのほとんどが動画のファイルではなく、ブラウザの中で HTML・CSS・JavaScript で描いたものです。そのうちの1本が、VOLTA という架空の EV ブランドの新型発表です。架空なので、車も自分たちで描くことになります。最初の版の車は、形だけでした。輪郭と、窓の代わりの灰色の面と、タイヤの代わりの黒い丸が2つ。遠目には車に見えますが、しばらく見ていると落ち着きません。
そこで、安っぽいという感想を、項目に分けてみました。好きか嫌いかではなく、何が無いのかを1つずつ言葉にしていく作業です。これをやると、感想が一覧に変わります。
出てきたのは5つでした。塗装に周りの景色が映り込んでいない。ガラスが窓に見えず、ただの灰色の面になっている。ドアやボンネットの継ぎ目が無いので、1枚の板をくり抜いたように見える。ホイールが黒い丸で、奥行きが無い。そして車体の下に影が無いので、地面の上に乗っていない。どれも、センスの話ではありませんでした。
直したのは、この一覧の上から順に、です。SVG で描き直して、塗装には上から下へ流れる映り込みを入れ、ガラスには塗装とは別の明るさを与え、ドアとボンネットの継ぎ目を線で足しました。ホイールは10本スポークにして、その奥にブレーキのキャリパーを描きました。接地の影は、車体の真下をいちばん濃くして、外へ向かって薄くしました。1つ直すたびに、安っぽさが少し減りました。
途中で、もっと単純な間違いも見つかりました。車の向きが逆でした。左向きに直したら、それだけで画面が落ち着きました。細かいところばかり見ていたので、いちばん大きな間違いに最後まで気づいていなかった、ということです。同じ確認で、画面の上側で車が切れていたことも見つけました。
もっと簡単な道もありました。実際の車の写真を使えばいい、という道です。けれど、それは選べませんでした。車の写真にはたいてい、メーカーのエンブレムや、見ればわかる車種の形が写っています。架空のブランドの映像にそれを入れると、見た人はその実在の会社の映像として受け取ります。作例としては、それは正しくありません。だから描くほうを選びました。
正直に書いておくと、この描いた車は、今のページには出てきません。あとで、ロゴも車種もわからない寄りの写真に置き換えました。ヘッドライト、タイヤ、夜の光跡です。描いた車は、よくできた絵のままで、実物の手前で止まっていました。それでも、描き直した時間が無駄だったとは思っていません。残ったのは車ではなく、さきほどの一覧のほうです。
この一覧は、車以外にも効きます。商品の写真が安っぽく見えるときにまず見るのは、だいたい3つです。影があるか(無いと物が浮いて見えます)。光の向きがそろっているか(そろっていないと、何枚か並べたときに別の店の商品のように見えます)。背景に生活の物が写っていないか(商品より先に目が行きます)。どれも、新しい機械や高い道具の話ではありません。
逆の直し方もあります。足りない物を足すのではなく、言いたいことを足してしまう直し方です。安っぽく見えるのを、文字を増やしたり効果を足したりして隠そうとすると、たいてい散ります。私たちが15秒の映像で決めているのは、伝えることを1つに絞る、ということです。車の映像なら、新型が出たという事実と、速さの印象だけです。
動画で売上が上がるとは、私たちは約束しません。約束できるのは、商品のいちばんの魅力を1つに絞って、文章を読まなくても数秒で伝わる形にすること、までです。まだお客さまのいない会社が言えるのは、そこまでだと思っています。
もし今、自分の商品が画面で安っぽく見えているなら、センスを疑う前に、項目に分けてみてください。「なんとなく違う」は直せませんが、「影が無い」は直せます。私たちが車でやったのは、それだけです。
最後に今の状況を書きます。KAZENA Motion は、ご注文・お見積り・お支払いをまだ受け付けていません。会社に動画制作の KBLI(事業の許可)を追加する手続きの途中で、取れるまでページはご紹介だけです。出ている金額はすべて予定の価格です。受付を始めるときの知らせは、ページから頼めます。許認可のことは自社の手続きとしてだけ書いています。私は税理士でも弁護士でもないので、ご自身の事業の登録については専門家に確認してください。
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