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当たり前すぎて、誰も教えてくれなかったこと

2026年8月30日 · Taro(KAZENA代表)

ジャカルタに来て、今日でちょうど1か月になります。7月30日に着いて、就労ビザの更新のために9月26日までこの街にいます。手続きの合間に人と会って、画面の話をしています。この1か月で教わったことのうち、いちばん効いたものは、どれも手引きに書いていないことでした。書いていないというより、書くようなことだと誰も思っていない、という種類のことです。

最初に効いたのは、私たちが出しているPDFの請求書でした。ジャカルタの会計士のVに、印刷して見てもらったときのことです。彼女は自分の事務所の実データでKAZENA Booksを20回以上試してくれています。紙を手に取って、少し黙ってから、これはこのままでは出せない、と言いました。数字の話ではありません。上が空いている、というのが彼女の言葉でした。

KOPのことです。会社名と住所、電話番号、そしてNPWPを載せた、書類の上部の帯。こちらではそれがあって当たり前で、無い紙は正式な書類として扱われないことがあります。私たちのPDFの上には、左上に小さくロゴが1つ載っているだけでした。日本の請求書の作法をそのまま持ってきて、ロゴを置けば十分だと思っていたのです。

なぜ今まで誰も言わなかったのか。それが、この1か月でいちばん考えたことです。Vは隠していたわけではありません。彼女にとってKOPは、紙にインクが要る、という話と同じくらい当たり前で、説明するようなことだと思っていない。こちらは、知らないことを質問できません。最初の1枚を印刷して机に置くまで、その問いは誰の頭にも浮かびませんでした。

同じ日に、もうひとつ教わりました。署名の横に押す会社の印です。署名だけの書類は、まだ途中に見える、と彼女は言いました。私たちのPDFには署名の欄がありましたが、高さが足りず、印を押す余白がありません。押せば署名の文字に重なるか、枠からはみ出すかのどちらかです。欄はあったのに、実際には使えない欄でした。

印紙のことも聞きました。一定の文書には10,000ルピアの印紙が要り、いまは電子のものも使われています。どの文書に要るのかは文書の性質で決まるので、ここで断言はしません。ただ、私たちのテンプレートには、それを置く場所そのものがありませんでした。制度を知らなかったのではなく、知っていて、紙の上に場所を用意していなかった、というほうが近いと思います。

証憑の考え方も違いました。私たちは、支払には領収書が出るものとして作っていました。こちらの実務では、振込の控えの画像が、そのまま証憑として回ります。取引に画像を添えられる場所がないと、その画像は誰かの端末の中に残ったままになります。ソフトの中に置き場所がないものは、実務では失われる、ということです。

手書きの紙のことも書いておきます。近所のwarungでは、レシートは手書きが普通です。金額の区切りはドットで、1000をKと書く人もいれば、rbと書く人もいる。品名は略語で、店の人にしか読めない書き方のこともあります。昼にnasi padangを食べて受け取った1枚を、その場でKAZENAの読み取りにかけてみました。半分は読めて、半分は読めません。試験用の整った画像で作ったものが、こういう紙の前でどうなるかは、ここに来るまで見たことがありませんでした。

直したものを書きます。書類は3種類、請求書と領収書と源泉徴収の控えです。上部にKOPの帯を入れて、会社名と住所とNPWPを設定から差し込むようにしました。署名の欄は高さを広げて、印を押しても文字に重ならない余白を取りました。印紙の場所を1か所決めました。取引に画像を添えられるようにして、振込の控えをそこに置けるようにしました。合わせて4か所です。どれも難しい実装ではありません。難しかったのは、必要だと気づくことのほうでした。

新しいテンプレートは、仲間のEにも見てもらいました。彼はジャカルタから少し離れた町にいて、私が見ている紙とは少し違う紙を見ています。彼が言ったのは、住所は2行に入る前提で作ってほしい、ということでした。彼の町の住所は、RT/RWからkelurahan、kecamatanまで書くので長くなります。私が作った枠は1行ぶんで、はみ出した文字が黙って切れる作りでした。この街の住所しか見ていなかったら、たぶんそのまま出していました。

設計として何を思い違えていたのかは、はっきりしています。書類は、こちらが生成した時点では、まだ終わっていません。そのあとに、相手の経理の机と、税務の窓口と、何年か後の書庫を通ります。私たちが作っていたのは、画面で見て正しい紙でした。必要だったのは、その先の机を通れる紙です。この2つは、同じソフトから同じように出てきますが、同じものではありません。

この1か月でわかったのは、私が偶然ぶつかったものだけです。印刷して人に見せたから知った、食べに行ったから知った、というものばかりで、体系的に調べて出てきたものはひとつもありません。画面越しには分からなかった、という言い方は、たぶん正しくありません。分からなかったのではなく、聞かなかっただけです。

念のため書いておきます。私は税理士ではありません。印紙が要る文書の範囲も、請求書に載せるべき事項も、文書の性質や取引の形で変わりますし、決まりは時とともに変わっていきます。ここに書いたのは、私が現地で教わって、自分たちのソフトを直した範囲の話です。実際にどの書式が要るのかは、必ず専門家に確認していただくようお願いします。

お願いがあります。KAZENAが出す書類を印刷してみて、あなたが実際に使っている紙と違って見えたら、どこが違うのかを教えてください。上が空いている、という短い一言で、私は1か月ぶんの思い違いに気づきました。当たり前すぎて言うまでもない、と思っていることほど、こちらは知りません。

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