行全体で開く表と、文字を狙う表がある。8月19日に、仲間のEからそう書かれたメッセージが届きました。不具合の報告ではありません。彼はただ、気づいたことをそのまま書いてきただけです。読んだときの私は、そういう言い方もあるな、と思って短く返事をしました。この1行が、そのあと2日ぶんの作り直しになります。
彼が何をしていたかを書きます。Eはジャカルタから少し離れた町にいて、いつも自分の電話でKAZENA Booksを触っています。そのとき開いていたのは取引先の一覧でした。行を押しても何も起きません。何度か押して、画面が固まったと思って、彼はいったんアプリを閉じています。もう一度開いて、たまたま会社名の文字の上を押したときに、詳細が開きました。押せなかったのではなく、押す場所が違っていた、ということです。
自分たちの画面を数えました。一覧の形をしている画面が10画面ありました。行のどこを押しても開くものが4画面。会社名や番号の文字の上だけが効くものが3画面。行の右端に「開く」のボタンが付いているものが2画面。そして、2回続けて押さないと開かない画面が1画面ありました。10画面で4通りです。誰かが決めてこうなったわけではありません。それぞれ別の日に、別の必要があって書かれ、そのときいちばん自然に見えた形になっただけです。
なぜ3か月も報告が来なかったのかを考えました。使う人は、画面ごとに作法が違う、とは報告しません。報告として届くのは、この画面が開きません、という形です。過去3か月の問い合わせを読み直したら、一覧が開かないという報告が6件ありました。6件とも、文字の上だけが効く3画面のどれかです。そのうち4件を、私たちは再現しませんという返事で閉じています。こちらは机の上のマウスで、ちょうど文字の上を押していたからです。報告は届いていました。読み違えていたのはこちらです。
ジャカルタの会計士のVにも聞きました。彼女は自分の事務所の実データでKAZENA Booksを20回以上試してくれています。この件を話したら、どの表がどれか覚えていないので、いつも文字を狙って押している、と言われました。全部の表で、いちばん狭い的に合わせて押していた、ということです。彼女はそれを不便だとは言いませんでした。慣れたから、と言っただけです。使う人が黙って身につけた癖は、こちらに報告として届きません。届かないまま、毎日少しずつ時間を取っています。
昼にnasi padangの店に入って、その話を思い出しました。あの店では、並んでいる皿を指で差します。名前を言う必要はありませんし、札の小さな文字を狙う必要もありません。欲しいものそのものを差せば、それが出てきます。指すべきものが、大きいまま目の前に置いてある、というだけのことです。私たちの表では、欲しいものは行いっぱいに書いてあるのに、押してよい場所はその一部だけでした。
決めた規則を書きます。一覧の行は、どこを押しても開く。行の高さぶん全部が的です。開いた先は同じ画面の中で、戻る場所が分かるようにする。1つの行に、主な行き先は1つだけにする。書いてしまえば当たり前の3行ですが、この3行が、その週まで、どこにも書かれていませんでした。
危ない場所も一緒に直しました。削除のボタンが行の中にそのまま置かれている画面が3画面ありました。行全体が開くようになると、その削除は、開くための的のすぐ隣にあることになります。電話の画面では、この2つはほとんど同じ場所です。削除は行の右端のメニューの中に移しました。下書きのように消すことが多い画面でも同じにしています。消す前の確認には、消す対象の名前をそのまま出すようにしました。
例外も決めました。選ぶための表です。左端にチェックの列があって、行を押すと選択が入れ替わる。この表では、行を押しても開きません。表には開く表と選ぶ表の2種類があって、1つの表がその両方であってはいけない、と決めました。見た目でも分けています。選ぶ表には左端にチェックの列を出して、上の見出しに、いま何件選んでいるかを出しました。
行の中から別の場所へ行く文字も残っています。請求書の一覧で、取引先の名前を押すと、その取引先の画面に行く。これは行そのものの行き先とは違いますから、下線を引いて、押したときに行の動作を止めるようにしました。この形は、本当に必要な2か所だけに減らしています。以前は、ただの説明の文字にも下線が引かれていて、押せそうに見えて何も起きない場所がありました。
かかった時間を書きます。10画面で2日です。作業のほとんどは、共通の部品を1つ作って、それぞれの画面をそこに寄せることでした。難しかったのは書き換えではなく、どれに揃えるかを決めるほうです。決めたあとで、作法を1ページにまとめて、コードと同じ場所に置きました。11画面目を作る人が、また別の形を考えなくてよいようにするためです。
私が思い違えていたことは、はっきりしています。作法を揃えるのは、見た目を整える仕事だと思っていました。急ぐことがある日は後回しにしてよい種類の仕事だ、と。違いました。作法が揃っていない画面は、壊れている画面として読まれます。1つ1つの画面は、それぞれの日に正しく作られています。それでも、集まったときには間違っていることがある。正しさは、画面1つの中だけでは決まらない、ということでした。
お願いがあります。KAZENAの画面で、押しても何も起きない場所に出会ったら、そのまま教えてください。すでに自分なりの押し方を見つけて、うまく使えている場合も含めてです。工夫して使えてしまった不具合は、私たちのところには一生届きません。今回それを教えてくれたのは、電話で表を押していた仲間の、報告ではない1行でした。
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