7月30日にジャカルタへ入りました。就労ビザの更新のためで、9月26日まではこの街にいます。朝の渋滞、昼過ぎのスコール、夕方にどこからともなく漂ってくるサテの煙。日本から来ると、この街は最初の3日で必ず一度、人を疲れさせます。そして4日目くらいから、なぜか楽しくなってくる。今回もそうでした。
滞在中にいちばん時間を使っているのは、現地の会計士の方にKAZENA Booksを実データで試してもらうことです。ここではVと書きます(ご本人の希望で、イニシャルだけにします)。もう20回以上、実際のCoretaxに向かって書類を作っては、通らなかった場所を送り返してくれています。この製品がいまの形になっているのは、半分くらい彼女のおかげです。
先週届いた報告は、こういうものでした。「BP21(従業員以外への支払いの源泉徴収票)のXMLを書き出したら、相手方の税番号が 0 になっている」。
実データを見て、血の気が引きました。彼女は、NPWPを持っていない相手の欄に「0」と入れていたのです。これは彼女の間違いではありません。インドネシアの実務では、空欄を嫌う書式が多く、とりあえず0を置く習慣が広くあります。問題は、私たちのコードがその0を「番号」として素直に受け取っていたことでした。
何が起きるか。年次のBPA1では、受領者を税番号でまとめます。すると、NPWPが「0」の別人どうしが、同じ一人として合算される。手元の実データで再現したら、二人分の給与がきれいに1枚にまとまり、年収が3倍の書類ができあがりました。しかも警告はひとつも出ません。エラーで止まるバグより、黙って正しい顔をして出てくるバグのほうが、ずっと恐ろしい。
調べていくと、もうひとつ見つかりました。NIK(住民番号)が15桁だったとき、私たちは頭に0を足して16桁にしていました。書いた本人としては「親切な補正」のつもりだったはずです。でもこれは、実在するかもしれない他人の番号を製造する行為です。桁が足りない番号は、直せません。だから、直さないことにしました。止めて、その行を名指しします。
修正の中身は、正直に言えば地味です。「0は番号ではない」「NIKは16桁だけ」という規則を、様式ごとに書き足すのをやめて、1か所に集めました。BP21も、BPMPも、年次のBPA1も、請求書の買手欄も、同じ関数に聞きに行く。今回の根っこは、賢い判定が無かったことではなく、同じ規則の置き場所がバラバラだったことでした。同じことを2か所に書くと、必ず片方が忘れられます。
止める場所も変えました。以前は書き出しのときに初めて「この行は出せません」と言っていた。その前の週には、入力はすべて正しいのに1項目だけ足りない状態で画面のボタンが止まり、Vから「これはエラーですか?」と聞かれています。手順書には書いてありました。でも、入口で言わずに出口で止めたのは、こちらの落ち度です。いまは給与の入力画面が、その行を編集している最中に「保存も記帳もできます。ただし、書類に載るにはこれがまだ足りません」と先に言います。
彼女からはもうひとつ、「出せない人の名前は一覧で見られないのか」という質問がありました。ごもっともです。止めた画面に、載せられなかった行を名指しで並べるようにしました。何件だめなのか、ではなく、誰がだめなのか。人の名前で返す。
ひとつ、正直に書いておかなければならないことがあります。この変更で、これまで出せていた行が出せなくなります。15桁のNIK、桁数の合わないNPWP。以前より不便になる人がいます。それでも、他人の番号が入った書類を役所へ出してしまうよりは、ずっといい。私たちはそう判断しました。
この一件で、自分の中ではっきりしたことがあります。会計ソフトの仕事は、欄を埋めさせることではありません。嘘をつかないことです。空欄は、空欄のままにしておいていい。分からないものを、それらしい形に整えてしまうほうが、よほど罪が重い。
夜、宿の近くの店でナシゴレンを食べながらこれを書いています。氷の入った甘いお茶。隣の席では家族が普通に夕飯を食べている。Vはこの街で働いています。創業のころから一緒にやっているEがいるのは、ここから少し離れた田舎の町です。二人とも、この国で普通に働いている人たちです。日本にいて画面だけ見ていたら、「0」に込められた実務の習慣なんて、一生知らなかったと思います。現地にいる理由は、たぶんこれです。
念のため書いておくと、私は税理士ではありません。税務の最終判断は必ず専門家に確認してください。私たちにできるのは、その確認がすぐ終わる形に数字を整えておくことと、分からない所を分からないと表示することだけです。もし、あなたがお使いの会計ソフトで「そこは空欄のままでいい」と言ってくれない画面に出会ったら、それは製品の側の問題です。遠慮なく教えてください。メッセージは私が自分で読んでいます。
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KAZENAのアプリを使った感想、直してほしいところ、「こんな機能が欲しい」という提案——インドネシアやフィリピンの中小企業オーナーさん、フリーランスの方の声こそ、私たちが一番聞きたいものです。インドネシア語・英語のメッセージには、現地を知り尽くした仲間が応えます。また、KAZENA Booksはフィリピンとインドネシアでの展開がすでに決まっています。それ以外の国で一緒に展開してくださるパートナー企業様、システムのご購入をご検討の企業様も、お気軽にご連絡ください。新しいシステム開発のご相談もお受けしています。少人数のチームのため、すぐの着手をお約束できないこともありますが——日本品質(メイド・イン・ジャパン)のものづくりで、現地の商売に寄り添う開発を、一件ずつ丁寧に。
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