インドネシアの次は、フィリピンの話をさせてください。
マニラで仕事を始めた頃、私は少し身構えていました。渋滞がひどいとか、手続きが大変だとか、事前に聞かされていた話はどれも「大変そう」なものばかりだったからです。実際、渋滞は本当にひどかった。これは擁護できません。EDSA通りで2時間動かなかった日のことは、たぶん一生忘れません。
でも、それ以外の記憶は、ほとんどが人の温かさです。
フィリピンの人たちは、とにかくよく笑います。停電しても笑うし、スコールでずぶ濡れになっても笑う。最初は不思議でしたが、一緒に働くうちに分かってきました。彼らは能天気なのではなく、大変なことを大変なまま受け止めた上で、それでも明るくいることを選んでいる。あれは強さです。私は何度も、その強さに救われました。
私にも、その強さを一番近くで見せてくれた仲間がいます。マニラで出会ったフィリピン人の同僚で、名前は伏せておきますが、彼女は私が投げる無茶な相談をいつも笑顔で受け止めて、気づけば私より先に段取りを終えてくれている。日本語を話せないインドネシアの仲間と私のあいだでは、いつも言葉の橋渡し役です。彼女がいなければ、私たちの会話はいまだに身振り手振りだけだったかもしれません。細やかで、辛抱強くて、そして誰よりも義理堅い。彼女と働けたことは、私がフィリピンで受け取った一番の幸運だと思っています。
一緒に働いた仲間の多くは、家族のために働いていました。給料日に家族へ送金して、少し誇らしそうにしている姿を何度も見ました。この国には「バヤニハン」という言葉があります。村の引っ越しで、家をみんなで担いで運ぶ、あの有名な助け合いの精神です。家族のため、仲間のために力を合わせることが、この国では当たり前の風景としてある。
英語が通じて、人口は増え続けていて、働く人は若くて真面目で、ホスピタリティがある。フィリピンの可能性は、現地で働いたことのある人なら誰でも肌で感じていると思います。私もその一人です。
インドネシアとフィリピン。この二つの国で受け取ったものが、いまの私の会社の土台になっています。